書くことは娯楽

内省持ち。何時も何か考えてます。会話でなく対話が好き、何時も誰かと対話していたい。内省と対話の結果、自分の中で出来た何かを言語化して残します。プロサラリーマン、プロ営業。バイクとビール好き。

500円弱で人間性を揺さぶられた話

先日、スーパーでの出来事。明らかに買った物の金額と、実際に支払った金額が違うのに気がついた。その価格500円弱。決済が済んでお店を出る直前に、あれ?思っていたより金額が少なくないって、ふとレシートを見たら、確かに一品抜けていた。

 

決済の時に気がついていたら、「間違ってますよ」というぐらいの正義感はあるので問題はなかったけども、その時は考え事をしていて、心ここにあらず。お店の扉を出る直前まで意識できなかった。

「間違ってますよ」って、申告しようと直ぐに振り返った。レジを離れても自分自身の小さな正義感もそうさせたし、トレーサビリティというわけじゃないけど、レジの記録や監視カメラで、その気になれば追いかける事が出来るし、後で何か文句をつけられても嫌なので。

で、決済したレジを見てみると、かなりの人が並んでいた。7,8人ぐらいいて、その後ろにまたわざわざ並ぶのも面倒だなって思った。その時、その後ろに並んでまで、これを申告するのはどうなのという気持ちが出てきた。

 

「相手のミスで、多分よくあること お人好しすぎない?寧ろラッキーでいいだろ」という気持ちと、「今後も気持ちよく買い物する為にも、ここはちゃんと筋を通そう」という気持ちの間で葛藤が沸き上がった。

 

よくこういう場面は天使と悪魔で表現されるけど、俺の頭の中では凄腕セールスパーソン2人が言い合ってた。メガネの知的なセールス2人が、そのわずか500円弱に関して静かに議論を始めた。

「実利派:向こうのミスなんだから向こうが悪い、取引は終わってる」と「正義派:どうであろうが、世の中フェアにいくべき」が静かに言い合ってた。

多分30秒ぐらいだけど、この30秒が感覚的に15分ぐらいのように感じられた。お店の自動ドアの前で、30秒ボーッと間抜け面をしながら、頭の中で色々考えてる奴の姿は、傍から見たら気持ち悪かったに違いない。で、実利と正義の敏腕セールス2人、互いに決め手を欠き、膠着状態に陥った30秒後、もう一度レジを見たら更にその列は長くなっていた。

 

それを見た瞬間、実利派・正義派は何時の間にかどっかに消えてしまって、素の俺が「明日またこの店に買いに来て、その時にレジで申告しよう」と決めた。列の長さが耐えられない気持ちと、明日、また店に来て申告できると思う気持ちが、鉄のように固まったからそう決めた。なので自動ドアを外に通る事も出来た。

ただ自動ドアを潜った瞬間、犯罪者になったような気もした、というか法的に調べたら、そうなのかもしれない、正確には知らんけど。

 

そして翌日。素晴らしい案だと思った、「翌日また出直して申告する」という事のハードルが、めちゃめちゃ高いことを気付かされた。

はっきり言って邪魔くさい、はっきり言って面倒くさい。

目標を立てる時、未来の努力を過小評価しがちな事を此処で思い知る。

 

よくよく考えたら、なんで店が間違えたのに、店の責任なのに、客の俺がこんなに思い悩まないといけないんだという気持ちになってきた。この俺の葛藤は500円弱分じゃ効かないぐらい、寧ろもっと金を払って欲しいとさえ思うぐらいになっていた。

 

もう決まりかなと思いつつ、それでも押し通せず悶々としていたら、最後の最後、

「お前の正義のプライドは、500円より安くはないの」

と言う声みたいなのが聞こえた。ような気がする。

 

そう。なんかこれって、得したとか悪い事したとかの話じゃない。自分の正義のプライドの話。誰かに対する正義とかじゃなくて、自分が自分に対して持つ正義の問題。気が付かなかったら幸せだったけど、気が付いた以上、これがたとえ1円だろうが500円だろうが1万円だろうが10万円だろうが関係無い。こちらは一切悪くなく、そしてその申告にどれだけ手間暇がかかる事であろうが、その手間をこちらが全て負う事も全部呑み込んだ上で、やっぱり「間違ってます」って言うべき。

それは相手のためではなく、自分のプライドを証明し、大事にするため。500円弱という金額が微妙だから、「いいや」になりかけたけど違う。金の大小で判断するなよと、プライドの問題。当たり前すぎる事が、めちゃくちゃストンと落ちてきた。凄く自然に納得できた。

自分が今まで生きて培ってきたプライドと、これから生きていくに持って行くプライドを考えたら、ここはやっぱり「間違ってます」と申告するべき。

これをこのまま、面倒くさいし、もういいじゃんで済ましていたら、その記憶が意識無意識関わらず、後々なんかの選択の時に、大きな選び間違いをすることに繋る気がする。危なかった。

 

というわけで、翌日申告に行き支払いました。

何の証拠もないけど理由を説明し、「500円弱払わせてくれ」って伝えて、受け取ってもらいました。カスタマーサポート担当の方からは、なんか変な人を見るような感じで対応されたような気もするけど関係無い。

俺のプライドは保たれ、揺さぶられた人間性は再度整えられた。

 

以上包み隠さず、恥ずかしい出来事を公開させて頂きました。

 

何かの間違いで、俺が有名人になったら真っ先にこの文章は消すので、読まれてる方はめちゃくちゃレアなもん読んだかもしれません。ただ残念ながら何かの間違いは起こらないので、この文章は戒めとして、ずっと残し続けよう。

 

500円弱でこれだけ考えさせられ、これだけ倫理観を試され、こんなに人間性を揺さぶられた。

今まであのスーパーで買った商品の中で、一番コスパがいい「買い物」だった気がする。