「蒸発現象」という、此方と対向車のヘッドライトの光が重なる部分が見えなくなる現象がある。交差点で止まっていると、たまに横断中の人が消えるのがこれ。人間の視覚的に見えなくなるため、根本的な対処方も無く、物の本にも回りくどい言い方で「気を付けるしかないよね」的な事しか書かれていない。
幸い運転中はほとんど遭遇しない。夜間、車が行き交う車道の真ん中に、人や自転車がいるってそうそう無い。でもそれに先日出会った。30年近く運転してきて、運転中の蒸発現象が初めてとは言わない。でも数える程の経験だったそれが1つ増えた。あと5キロ速度が違っていたり、よそ見をしてたら、轢き殺してたかもしれない。
教科書的なことを言えば...
こちら、制限速度以下で、常に何があってもおかしくないよう、あほみたいに警戒しながら運転。
歩行者、夜間出る時は明るい色の服(轢き殺されかけた方は上下真っ黒)、出来れば反射材付きの服。
対向車、もし気が付いていたらクラクションを鳴らす。
でもそんなのただの理想論。
此方はほぼ制限速度、歩行者だって自殺志願で飛び出してきたわけじゃないし、偶然その瞬間すれ違った対向車だって当然無罪。三者とも教科書通りではないけど常識の範囲。車道を横断すな、そもそも横断歩道渡れやとは言いたいけど、普通にありえる、想定内の行動、許される行動。だから誰も悪くないし、誰に対しても文句言うつもりも無い。
車の運転じゃなくてもこういう事はある。死まではいかずとも、何かの運でとんでもなく不幸な流れになったり、引いては人生狂わされたり。自分の意志、何かの判断、取った行動でそうなるならまだ理解できるけど、「それ、こっちは何もしてないし、関係ないんですけど」ってことで、人生予期せぬ方向に進んでいく。反対に幸せな方向に進めてくれることもあるんだろうけど、それは勝手に自分の力、手柄にしちゃってるから気が付きにくいだけ。それなら、不幸なことを運のせいばかりにするのもフェアじゃないって思わなくもないけど、ただまあ、どっちにしろ運はあるよねと。
人生、たまにこうやって、運で動かされていることを知らしめされる。豪快に導き、時に強烈に干渉してくる。順風満帆、自信満々、我こそ覇者なりな生き方の鼻をへし折られる。でもたまにへし折られる方が、人生多少なりとも臆病になれて、驕らず、慎重に生きることが出来るからいいのかもしれない。最近、調子に乗っていたなと受け入れる。運を拒否はできない。