書くことは娯楽

内省持ち。何時も何か考えてます。会話でなく対話が好き、何時も誰かと対話していたい。内省と対話の結果、自分の中で出来た何かを言語化して残します。プロサラリーマン、プロ営業。バイクとビール好き。

30年後の30分

 

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きっかけは本当にふとしたことで、梅田であった用事と用事の間、時間が空いたから散歩がてら東通り商店街をフラフラしていたら、偶然すごく有名なゲームセンターを見つけたことから。あーここにあったのかと、そのままフラフラ入った事から。

 

昔、ゲームにハマっていたゲーマーなので、そのお店の存在は知っていたけど、実際に入ったのは初めて。ゲームなんてここ20年近くやっていないので、お店に置いてある最新型のゲームはさっぱり分からなかったけど、レトロゲームのコーナーがあり、その中にそのゲームはあった。自分が中学生の時に熱中したゲーム、30年以上前にやり込んだゲームがそこにはあった。

 

クリアするまで凡そ30分ぐらい。ちょうどそれ位の時間があった事もあり、プレイ料金の50円を入れてそのゲームをやってみる。やってみると、この手の話でよくあるのが、「その当時を思い出して懐かしい」という話だけど、そんな気持ちはなく、単純にただただ面白く、楽しかった。やっていくうちに、少しずつそのゲームのことを思い出してきて、最初どこか引いた感じ、暇つぶしで始めたのに、中学生の頃のように、ハマっていった。結局最後の最後、この時は「世界を救えなかった」けど、30年以上のギャップがある割には、そこそこ進めて満足だった。

 

次の予定までいい暇つぶしが出来たと店を出て、次の用事をこなして家に帰る。夜は、その日にあった最初の用事と、次の用事の余韻に浸った。どちらも大切な用事だったので、楽しく過ごせてよかったと、上手くいってよかったと余韻に浸った。

でも、どうにもそのただの時間潰しで入ったゲームセンターで、たまたま見つけたそのゲームの記憶が、強く強く自分の頭の中で反射しはじめてきた。二つの用事はいい想い出になり、楽しかったという記憶に格納されていく。けれどそのゲームのことは、1日、2日と経っても記憶に格納されず、そういえばあの時の謎解きはどうだったのかとか、30年前には出たキャラクターが見えなかったのは、何かしくじったかなとか、どんどんどんどんそのゲームのことが気になり始めた。

 

暇な時間、ネットを検索すると、YouTubeを検索すると、すごい数の情報が出てきて、凄い数の動画が出てきた。気が付いたら飽きずにずっとその情報と動画を追っていた。当然30年前のことを思い出しだけど、それは30年前の学生時代がどうのこうのではなく、30年前、そのゲームをプレイした自分のことだけが思い出されてきた。ああいうテクニックがあったなとか、ああいう隠し通路があったなとか、ああいう隠れキャラが出たかなとか、そういうのが全部全部思い出されてきて、YouTubeを見る度に、自分がプレーしてる気分になっていった。暇つぶしに見てたYouTubeが、自分から時間を作って見るようになった。

 

たかだかゲーム、だけどされどゲームで、30年以上前の自分にとって、ゲームというのはかなり自分の中で大きな割合を占めていた。今は1%も無いけど、なぜかあの時ふらっと入ったゲームセンターで、ふらっとやってしまった事によって、今だけ、自分の中で30年前の自分が甦ったかのように、心を占める割合が増えていった。もうこうなるとどうにも我慢ができなくなり、わざわざそのゲームをやりに梅田まで行った。もう45の男が、30年前の中学生の時にハマったゲームをやりに、片道30分以上かけて梅田のゲームセンターにそのゲームをやるためだけに行った。

 

プレイし始めると、直ぐに30年前に戻った感覚が下りてきた。ネットで見た、YouTubeで見た攻略も思い出したけど、それ以上に30年前の自分で得たテクニックと知識が舞い降りてきた。自分で自分を見る事は出来ないけど、周りから見たら、くそダサい学生服でゲーセンに通っている、ニキビ面した中学生がゲームの前に座っているように見えたんじゃないか。

この時、30年前のベストなテクニックと、このゲームのほぼ全ての知識を蘇らせた、理想的なプレイで「世界を救った」。今迄何百と世界を救ってきたけど、約30年ぶりに世界を救った「回数」が一つ増えた。30年前の自分が下りてきているので、当時と同じように、楽しみ笑った。この時の充実感といったらなかった。

 

1週間近く経った後、どうしても、もう一度その感触を味わいたく、わざわざ仕事帰りにまた梅田に行った、また100円玉を50円玉に両替してゲームに挑んだ。でも、あの時の高揚感は戻ってこない。30年前の感触はもちろん、1週間前に感じた「30年前に戻った感触」すら戻ってこない。ダラダラとプレイをして、世界を救った数が1週間ぶりに1つ増えただけ。楽しいことは楽しかった、でもあの30年前の高揚感は戻ってこなかった。

 

あの日の1日、たった30分だけ、30年前の中学生時代に戻れた。

 

人生は一方通行で、現在から未来に向かうのみ。

過去を振り返り、過去の経験を元に、一方通行の道を進むのみ。

過去に戻ることなんてできない。

 

でもあの30分は間違いなく過去に戻った。

 

またこんな経験ができるのかどうかなんてわからない。

でも、もしまたあるのなら、何年後か何十年後かわからないけど、あるのなら、何百回と世界を救って平和をもたらした数が、また一つ増えることを、楽しみにしている。